極上御曹司は失恋OLを新妻に所望する
「そんな、いかにも風呂上がりみたいな格好で出てきたらさぁ、男がどう思うかくらい考えればわかるじゃん? それなのにそのまま出てくるって、誘ってるも同意でしょ」
一歩近づいてきた男が私の手首を掴んでくるから、「触らないでっ」と振り払おうとしたけれど……こんなもやしみたいな体型なのに力では敵わなくて驚く。
どう見てもひょろひょろだし、体重なんてきっと私とそう変わらないと思うのに、腕を掴む力は完全に男の力だった。
玄関の壁に押し付けられ、ダンという音と同時に背中に痛みが走る。ギリッと奥歯を噛みしめて睨みつけた。
「勘違いしてるみたいだけど、私はまず誘ってないし、なにかしたら警察呼ぶから。日照権についても最初から話し合う気なんてなくて、おばあちゃんを脅して強引に話進める気だったんでしょ? 本当、最低。さっさと帰って」
「警察だの権利だの、ビービーうるさいんだよ」
はぁ、と嫌そうなため息をついた男が言う。
「せっかくあの男がいない時を見計らってきたのにさぁ。あのばばあだけなら丸め込めるのに、あの男が日照権とか言いだすから。せっかく四階建てで話進めてたのに一気に振出だしどうしてくれるわけ?」
「自業自得でしょ。その前にそんなことを平気な顔して言えるのが、まず呆れる……。お年寄り騙して恥ずかしくないの? 自分よりも弱い相手にしか物事強く言えないなんて、男として情けないと思わないの?」
「別に? そんなプライドで飯が食えるならそうもするけど、違うじゃん。俺は俺の生活さえ潤えば周りの人間がどうなろうが知らないし」
そこまで言った男が、「っていうかさぁ」と声を大きくする。