極上御曹司は失恋OLを新妻に所望する


「これやるよ。俺の名刺。社内で使ってる携帯番号が載ってるから、プライベート用と両方登録しとけ」

「名刺? うわ、CEOって入ってる。嫌味だ」
「なんでだよ。事実なんだから仕方ないだろ。それより、携帯出せ」

言われるまま携帯を差し出した時、タイミング悪くメッセージを受信する。ポップアップで表示された【迷惑だったかな?】という文字は、当然伊月の目にも入ってしまったようだった。

「なんの話? おまえ、この高田ってやつに迷惑かけられてんのか?」

たぶん、伊月はただ心配してくれているだけなんだろう。前回の大家の男との件があるから、用心の意味で聞いているだけだ。

それでも、なんとなく気まずく思い、伊月からもらった名刺を携帯カバーにしまいながら目を逸らす。

「ううん。そういうんじゃないから大丈夫」
「じゃあ、どういうんだよ」
「だから……ただ、会いたいって言われて返事をしなかったから聞いてきただけ」

あまり詳しく言いたくはなかったけれど、嘘をつく気にもならなかった。

少し語気を強めてしまったことは自分でもわかったので、気まずく思っていると、伊月は気に入らなそうに眉を寄せた。

「おまえ、もう他の男がいるのか?」
「男って、変な言い方しないで。違うよ。ただ、友達とか大地が薦めるから流れでこうなっただけで……なに? 雰囲気怖いよ」

ピリピリとした雰囲気もだけど、顔も怖い。
不愉快そうに険しくゆがめた眼差しを向けられ、たじろぎたくなっていると、伊月が手を前につき、身をのりだす 


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