極上御曹司は失恋OLを新妻に所望する
勢いよく話し出したのに急に黙りうつむいた私を不思議に思った伊月が「おまえ、どうした?」と声をかける。
「なにかあったのか?」という声には心配がうかがえ、その優しさに、ぐっと歯を食いしばった。
「ちょっとごめん……今、余裕がなくて。帰ってもらってもいい?」
目を合わせ告げた私に、伊月は少し黙ったあとで口を開く。
「おまえがそう望むならそうする。今、ひとりになりたいのは本心なんだよな?」
コクリとひとつ頷くと、伊月はスッと立ち上がり……私の頭をポンポンと撫でた。
「近いうちにまた来る。そのときまだなにか悩んでる顔してたら、次はおまえがどんなに嫌がっても理由を吐かせるからな」
スタスタと長い足で歩いていく伊月は「戸締り、ちゃんとしとけよ」と言い残し出ていく。
その優しさに胸はジクリジクリと痛むばかりで、しばらく動くことができなかった。