極上御曹司は失恋OLを新妻に所望する

「無理ですよ。マスターだって知ってるでしょ。身分違いもいいところです。私、これから仕事をなくすかもしれないような女ですから」

「そんなことを言っているのはつぐみさんだけであって、あの男はそんなこと気にもしていないと思いますけどね。相手が無職だろうとどこかのご令嬢だろうと関係なく欲しがって奪う男だと思いますよ。あれは」

すぐに返され、目を伏せる。
マスターの言う通りかもしれない。伊月はきっと、そんなこと気にも留めないだろう。
だから、あんな大きなものを背負っている立場のくせにうちに入り浸るっているのだから。

……でも。だからといって手は伸ばせない。

こんなことを、たった十日前に出逢ったばかりの男相手に思うのはどうかしているのかもしれない。

だけど……私はきっと、伊月に振り払われたら、もう立ち直れない。それが、怖い。
想像するだけで、堪らなく痛い。

「勝手ですけど。私は、私を守りたい。もう、傷つきたくないんです。……これが私のわがままなのかもしれません」

私の答えに、マスターは目を伏せ「そうですか」と微笑んでいた。



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