極上御曹司は失恋OLを新妻に所望する


結局、あのあと伊月は夕飯までうちで食べて行った。
平日の昼間から夜までずっとうちに入り浸っているなんて、一体、どんな職業の人なんだろう……と思い、大地に聞いてみたところ、驚きの答えが返ってきた。

「伊月設計ってあるじゃん。駅から近くてわりとデカい建物で目立つから姉ちゃんも知ってるだろ」

お風呂上がり、髪をガシガシとタオルで乾かしながら大地が言う。
片手には、お茶のペットボトルがあった。

「ああ、うん。あるね。……え、伊月ってあの伊月なの?」
「そうだって。俺も最初聞いたときは驚いたけど。なんか保険とかリースとか、いろんな部門があって、設計はそのうちのひとつにすぎないんだって。で、伊月さんってその伊月グループの御曹司らしいよ。いずれは本社に移るけど、今は設計でCEOしてるって話」

伊月グループっていえば、全国的にも有名なトップ企業だ。
その御曹司がさっきまでうちに……?と、未だ信じられないまま聞く。

「なに? CEOって」
「最高経営責任者だって。俺も知らなかったから調べて知った」
「最高経営……えー、あの顔で?」

眉を寄せ呟いた私を見た大地が「俺も最初は同じこと思った」と笑う。

「ちょっと簡単に信じられないけど……へぇ、そうなんだ。なんか、無愛想だし雰囲気怖いし、〝御曹司〟なんて似合わないよね。〝若頭〟とかのほうが合いそう」

私の斜め前に座った大地が、ペットボトルのふたをペキッと音を立てて開ける。


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