極上御曹司は失恋OLを新妻に所望する


「あれかな。御曹司にもなると、人当たりとかそういう英才教育も受けるのかもね。さて。私もお風呂入ってきちゃおうかな」

壁にかかっている時計が指すのは、二十一時半。
二十三時には寝たいし……と思い、立ち上がると、大地がそれを追うように話しかける。

「あ。姉ちゃんのバスタオル、新しいのに替わったから。水色と白とのストライプ柄のやつ使って」

「水色ね。わかった」
「先月、全員分新しくしたから。ばあちゃんが黄色と白のストライプで、俺が緑と白の」

教えてくれた大地に「了解」と返事をしてから、お風呂場のドアを閉める。
そして、ひと通り洗い終えたあと入浴剤で白く染まったお風呂に浸かり……はぁ、と息を漏らした。

『あらぁ、それは相手にしたら都合よかっただろうねぇ』
『勝手に連絡もよこさない、家にも来たがらないイベントも過ごしたがらない。浮気相手にはうってつけだよな』

頭の中にぐるぐると渦巻く、おばあちゃんと伊月の声を追い出すように、ため息をもうひとつ吐き出した。

落ち込むな。そんな暇ないんだから。
私はもう社会人で大人なんだから。やや強引にとったこの二週間の休暇で、きっちり立ち直らなくちゃ。


こうして、伊月のせいでひと際騒がしかった私の帰省一日目が終わったのだった。



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