極上御曹司は失恋OLを新妻に所望する


「ああ。まだ米残ってる?」
「伊月さん、俺と同じこと言ってる。やっぱ、おかずが多いとご飯の残量気になるよね」

笑いながら若鶏の甘酢あんかけに箸を伸ばした大地に、伊月は「いただきます」と手を合わせたあとで答える。

「バランス考えないとまずいからな。……ん。これうまい。つぐみ、料理とかできたんだな」

「姉ちゃんの料理はうまいよ。だって、ばあちゃん直伝だもん」
「ああ、そっか。ふじえの料理、うまいもんな」

話しながらも一切、手は止めない大地と伊月に、完全に作りすぎたおかずがどんどんと消費されていく。
圧倒されながらその様子を眺めていると、おばあちゃんに「ぼんやりしてると食べられちゃうわよ」と笑いかけられた。

「みたいだね」

頼もしい食欲に思わず笑いながら、私も箸を伸ばした。


絶対に残ってしまう……と心配していた料理は、信じられないことに完食された。
育ちざかりと働き盛りの男がいると、こんなにも食材が簡単に終わってしまうのか……と、今日は助かったと思うと同時に、これから先が不安になる。

うちの食費は大丈夫だろうか、と。

そんな心配をしながら食器を洗っていると、隣で食器を拭いてくれていた大地が教えてくれた。

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