極上御曹司は失恋OLを新妻に所望する


「伊月さん、週に一度くらいダンボールいっぱいの野菜持ってきてくれるんだよ。あと、肉とか魚介とかも、月に何度か差し入れてくれるんだけどさ、それがまた旨いんだよね。高そうだし。あと、ほとんど毎日、果物とかお菓子とか、デザート的なもの持ってきてくれるし」

食器を洗い終わって冷蔵庫を覗くと、大地が言っていたとおりプリンが四つ入っていた。
よくスーパーで目にする三連パックのではなく、ケーキ屋さんとかで売っている、器もこじゃれたヤツだ。

いつの間にか伊月が入れていたらしい。

伊月はうちの冷蔵庫を好きに開閉できる権利まで持っているのか、と感心する。冷蔵庫を勝手に開けるなんて、相当仲がいい友達の家でもまずしない。

「今日はプリンかー」と嬉しそうに取り出した大地が、四つのプリンを持って行く。
私はあとでいいや……と思い、縁側に腰掛け携帯を眺める。

暗くなった空の下、居間から漏れる明かりだけが庭を照らしていた。
チカチカと点滅する小さな青いランプが未読メッセージがあることを知らせている。ふぅーっとひとつ息をついてから開くと、予想した通り光川さんからで、もうひとつため息が落ちた。

ここ一週間ほど、〝もう一度話したい〟だとか〝会いたい〟と未練を匂わせるようなメッセージがちょこちょこ届いている。
今回のもそうで、いったいどういうつもりなんだろうとイライラする。

三股だってバレた時点で終わりに決まってる。しかも本命が私じゃないのならなおさらだ。本命彼女との結婚が決まったっていう話なのに、これ以上私となにを話すことがあるのだろう。

いつも通り返信はしないでアプリを閉じていると、ふいに気配を感じ顔を上げた。


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