極上御曹司は失恋OLを新妻に所望する


「ううん。それが代わったらしくて新しい方が見えたの。若い男性で……なんていうのかしらね、もやしみたいな……いかにも暗そうな子だったわー。覇気がなくてねぇ、孝一くんと大違い」

「ふぅん。で、その大家さんとケンカになったの?」
「そこまで大事にはならなかったけどね。孝一くんは終始堂々としていて冷静だったもの。大家さんは悔しそうにしてたけど」

普段の態度を見ていると短気そうに見えるけど……と考えてから、でも、大企業の御曹司だしなと思い直す。

伊月は相手を見て対応できる人なんだろう。ここで見せる顔だけがすべてではないのかもしれない。

冷静に対応している仕事モードの伊月を見てみたかったな、と思っているとおばあちゃんが言う。

「それで結局、大家さんは孝一くんに言われて、今まで通り二階建てのアパートにしたみたい。あとから考えれば、そんな高い建物を建てられちゃったら日当たりが悪くなるってわかるけど、咄嗟じゃなにも言えないじゃない? 私ひとりだったら頷いちゃってたところだから本当に助かったわ」

安堵のため息を落とすおばあちゃんに「そっか」と言い、お茶を飲む。

「たしかに、日が当たらなくなっちゃったら洗濯物も大変……あ、ねぇ。そういえば洗濯機いつ替えたの?」

忘れてたけど、いつの間にか洗濯機が新しくなっていた。あまり家電に詳しくないけれど、たぶん、割りと新しい機種だ。

「ああ、あれね!」と明るい声を出したおばあちゃんが説明する。

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