極上御曹司は失恋OLを新妻に所望する
「大家さんが帰ったあと、もし四階建ての建物なんて建てられちゃってたら洗濯物が乾かないし、孝一くんが助けてくれてよかったわーって話をしたの。そしたら、雨の日とか大変だろうからって孝一くんが乾燥機付きの洗濯機を買ってきてくれて。本当にびっくりしたわー」
「えっ、買ってきたの? 伊月が?」
「そうなの。いつもお世話になってるからって……本当にいい子でしょう? もう感動しちゃった」
洗濯機をプレゼントって……と唖然としながら言う。
「いい子とかそういう話の前に……だって、乾燥機能つきの洗濯機なんて二十万近くするのに……」
そんな高価なモノを、親戚でもないおばあちゃんに簡単にあげるなんて、普通の感覚ならありえない。
先日の食事といい、やっぱりなんだかんだいいつつ御曹司なんだな……と呆れ笑いが漏れた。
きっと、たまにうちに持ってきてくれるというお肉や海鮮だっていいモノなんだろう。
お金持ちっていう人種怖いな。
洗濯機の値段を知らなかったのか、おばあちゃんは「二十万……?」と眉を寄せる。
「やだ、そんなに高価なものなの? 孝一くん、なんでもないような顔してたから、そこまでだと思わなくて……でも、そうよね。あんなに便利な物なんだから……おばあちゃん、あんな若い子に貢がせちゃったわ」
「……まぁ、伊月本人がしたくてしたことなんだろうし、いいんじゃない? まさか、おばちゃん相手に恩着せようなんて頭もなさそうだし」
そんなズルいヤツじゃない……と思う。
おばあちゃんに洗濯機の値段を言っていないのがいい証拠だ。
「でも悪いから、今度ごちそうでも作ろうかしらね」
不安そうに言うおばあちゃんに「伊月、おばあちゃんのご飯好きだし、いいかもね」と笑顔を返した。