極上御曹司は失恋OLを新妻に所望する
【好き嫌いはないと思う。なに出してもバクバク食ってるし、苦手だって言ってんのも聞いたことないし。でもなんで伊月さんの好きなメニューとか聞いてくんの? 好きなの? それとも実はすでにできてんの?】
【好きじゃないしできてない。洗濯機もらったんでしょ? そのお礼がてら今夜はご馳走にするっておばあちゃんが言ってたから。っていうか、あんな高価な物、くれるって言っても断らなきゃダメでしょ】
おばあちゃんは価格がわからなかったにしても、大地ならそれなりに知っていたはずだ。
【いや、無理だし。いきなり業者が洗濯機持ってきて、伊月さんから設置するように言われてるし断られても困るって言われたらどうにもできないじゃん】
【まぁ、それもそうか】
【それでも、相手が胡散臭かったり裏がありそうだったら俺も止めるけど。伊月さんだしいいかって思って。つーか今日の夕飯ご馳走かー。腹空かせて帰ろ】
可愛いことを言う大地に、ふふっとひとり笑みをこぼしながら返信する。
【授業ちゃんと受けて気を付けて帰ってくるように】
【メッセージ送ってきといて今さら? あとこども扱いやめて。まぁ、気を付けては帰るけど】
〝こども扱い〟という言葉をスルーすることができなくて、ぼんやりと眺める。
そういえば、大地は反抗期がなかった。もしかしたら、そんな余裕もなく今まできてしまっただけかもしれないけれど。
だとしたら可哀想なことをしてしまったな、と考えながら携帯をバッグにしまい、窓の外に視線を移した。
大地はとても素直でいい子に育った。おばあちゃんにも私にも優しいし、多分、他人にも親切にできる子だ。男気もある。