極上御曹司は失恋OLを新妻に所望する
「……私とキスしたって聞いて、あんなボコボコにしようとしてたのに?」
つい昨日のことだ。
グローブまで持ち出していたのに……と思い言うと、大地は苦笑いを浮かべた。
「だってあれは咄嗟だったから。誰でもグローブくらいはめるじゃん」
「……まぁ、素手よりはいいかもしれないけど」
「姉ちゃん、昔からダメな男に騙されてばっかだったじゃん。見せかけの愛情に弱いって言うか、優しくされるとコロッと騙される。親のせいもあるのかもしれないけど、若干恋愛オンチ気味っていうかさ」
なにも言えずに、顔を背ける。
「高校ん時の彼氏はどうしょうもない遊び人だったし、次はモラハラDV男。俺、それがずっと心配だったから、伊月さんならまぁ俺も知ってるしって思って……」
そこまで言った大地が、なにか思い当ったようにこちらを見て眉を寄せる。
その顔に嫌な予感がした。
こういう勘のよさは、空手やボクシングで鍛えられたのだろうか。
「……もしかして、また変な男にひっかかって帰ってきたわけじゃないよな?」
「……まさか」
そうじゃないって言ってるのに。
大地の目には私の嘘なんてバレバレのようで、険しい顔をされてしまう。
「別に、たいしたことじゃないよ。ただ――」
厳しい眼差しに耐えきれず、事の次第をかいつまんで説明する。
それからそろそろと目を逸らすと、それを合図に大地のお説教が始まった。