極上御曹司は失恋OLを新妻に所望する
「大地も言ってたけど。優しくされるとダメなの。そのひとの行動の中に〝私のため〟っていう部分を見つけちゃうとなんか……すごく嬉しくなっちゃって。気にかけてくれたんだなって、それだけで舞い上がる自分を知ってるから、いつも感情だけで突っ走らないようにしてるんだけど……失敗ばっかり」
些細な優しさに嬉しくて仕方なくなってしまうのは、たぶん、私という存在を認められていると感じるからだろう。
小さい頃は、〝両親から愛されなかった自分〟というレッテルがどうしても剥がせなかった。
誰になにを言われたわけでもない。ただ、事実から自分自身で思っていたことだ。
成長するにつれ、勝手なのは両親のほうで自分に非はなかったんだと理解し直したけれど……小さい頃に貼ったレッテルはまだ払拭しきれていないのかもしれない。
だから、他人から与えられる優しさに過敏に反応してしまうのかもしれない。
〝両親から愛されなかった自分〟なんかを大事にしてくれるんだって、いちいち感動してしまうから。
『なんで姉ちゃんはそうなんだよ』
大地は、私のそういう部分も含めて言ったんだろう。
いつまでそんなレッテル貼ってるんだって、そんなことも伝えたかったのかもしれない。
「母親が出て行ったのが、大地が産まれてすぐでよかった。記憶も残らない時期でよかった」
独り言みたいに無意識に出てしまった言葉に、一拍置いてからハッとする。
隣を見ると、真面目な顔をした伊月がこっちをじっと見つめていたから、慌てて笑顔を作った。