幸せの花束をもらった日に、あなたに愛してるを〜箱庭の少女と舞台俳優〜
店の中に戻ってきたシリウスは、かぐやには目もくれずに美しすぎる容姿をしたエヴァの隣に腰かける。そして、談笑しながらお酒を飲んだり食べたりし始めた。

「エヴァ、この生ハムすごくおいしいよ!」

「本当ですね。おいしいです」

「エヴァ、ワイン飲む?」

「お酒は飲みません」

シリウスが話しかけるのは、エヴァばかり。その薄い青の瞳には、エヴァが特別に映っている。そう嫌でも突きつけられ、かぐやは悲しくなってしまった。

「かぐや、大丈夫?」

気が付けば、アイヴィーたちにかぐやは顔を覗き込まれていた。「体調でも悪い?」とケイリーに訊かれ、かぐやは「大丈夫です」と笑顔を作る。迷惑はかけられない。

「何かあったら言えよ」

バージルに言われ、かぐやはゆっくりと頷く。しかし、シリウスに対する想いなど決して話せない。

「シ、シリウスさん……!!」

初めて聞くエヴァの大声に、かぐやたちは一斉に声のした方を向いた。振り向く時、かぐやは思う。美しい人のどんな表情が美しく見えるように、声も美しいのだとーーー。
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