幸せの花束をもらった日に、あなたに愛してるを〜箱庭の少女と舞台俳優〜
かぐやが振り向くと、エヴァにもたれかかってシリウスが眠っていた。どうやら酔いが回ってしまったようだ。エヴァは困ったような表情を見せている。

「エヴァ、大丈夫?」

アイヴィーがエヴァに声をかけ、バージルがため息をつきながらシリウスをエヴァから引き離す。

「これは自分で歩けそうにないね」

ケイリーが苦笑し、かぐやは「馬車を呼びます」と言い席を立った。身長が百七十センチほどあるシリウスを女性二人で運ぶのは難しい。

店を出る前、かぐやはもう一度シリウスの方を見る。エヴァは優しい目を眠り続けるシリウスに向けていた。それにかぐやは胸を痛める。

この恋の結末はもう決まっている。かぐやの目の前がぼやけた。



数週間後、かぐやは船に乗っていた。潮風に髪が揺れるたびにかぐやはため息をつく。

「どうかされました?」

ため息をつくたびに、かぐやの顔を深い青の瞳が見つめる。その度にかぐやは「何でもない」と冷たく答えた。
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