幸せの花束をもらった日に、あなたに愛してるを〜箱庭の少女と舞台俳優〜
「立派なお屋敷ですね」

エヴァの言葉にかぐやは何も答えず、立派な門のある大きな屋敷を見つめる。もう戻ることはないと思っていたこの場所にもう一度来てしまったことを、かぐやはうんざりしていた。

「……帰りたくなんてなかったのに」

かぐやがうつむき、そう言うと「なぜですか?」とエヴァが訊ねる。かぐやは話すか迷った。シリウスにさえ、アンネストールに来た理由を話していない。

「かぐやさんは、何を抱えていらっしゃるのですか?」

エヴァはまっすぐな目をかぐやに向ける。その内側にどのような感情を抱いているかはわからない。しかし、エヴァの目を見ていると話したくなってしまうのだ。

「エヴァ、私はーーー」

かぐやが口を開いた刹那、「おかえりなさい!姉様!!」と屋敷の中から豪華な着物に身を包んだ少女が現れる。歳はエヴァと同じくらいだろう。

「さくや……」

過去のことを思い出し、かぐやは冷たい声で呟く。かぐやの妹であるさくやは、「どうしたんです?怖い顔して……」と首を傾げていた。
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