幸せの花束をもらった日に、あなたに愛してるを〜箱庭の少女と舞台俳優〜
「手当ては医務室にでも行くから大丈夫だよ。ところで君は誰?見かけない顔だけど」

ウーヌスの言葉に、女の子は涙を拭ってニコリと笑いかける。初めて見た人の笑顔に、ヴィクトリアの胸に不思議な想いが一瞬巡った。

「私はスカーレット。芸術に優れていて、よくレジーナ様の絵を描いたり、アクセサリーを作ったりしているんだ」

「芸術?」

首を傾げるヴィクトリアとウーヌスに、スカーレットはゆっくりと説明する。

エデンで育てられている子どもたちは、三つのグループに分けられている。一つが武術にも知能にも優れた子ども。二つ目が武術か知能のどちらかに優れた子ども。そして三つ目が芸術に優れた子どもだ。

「本当は、違うグループの人と関わってはいけないの。でも私は、色んな人を見たいし知りたいから来ちゃった!」

ヴィクトリアとウーヌスが無表情にも関わらず、スカーレットだけが笑顔で話す。話している間、少しずつ表情が変化していくのをヴィクトリアは見逃さなかった。
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