幸せの花束をもらった日に、あなたに愛してるを〜箱庭の少女と舞台俳優〜

「あなたは誰？私に何をしたの？」

シリウスが一歩でも動こうとすると、少女は警戒した目でいつでも攻撃できる体制を取る。その気迫はシリウスもびくりと肩を震わせるもので、驚いてしまった。

「お、落ち着いて！僕の名前はシリウス・プランタン。劇団の舞台俳優をしています。君が怪我をして倒れていたので、屋敷に連れて来ました。君の名前は？」

シリウスが自己紹介をすると、少女は戸惑った顔を見せた。そして、その唇がゆっくり動く。

「俳優？それは一体何？」

「えっ？」

シリウスも戸惑った。この国にいれば、否、普通に生きていれば俳優が何かわかるはずだ。しかし、目の前にいる少女は本当に俳優が何かを知らないようだ。

「俳優っていうのは、台詞や身振り、表情などで自分とは違う人物を演じる人のことです」

シリウスが説明すると、「また知らないこと……」と少女は呟く。そんな表情すら美しく、シリウスはまた見とれてしまった。