幸せの花束をもらった日に、あなたに愛してるを〜箱庭の少女と舞台俳優〜

「シリウス、エヴァはまだ部屋にいるの？」

劇の稽古を終え、シリウスが休憩をしているとアイヴィーに話しかけられる。その顔はいつものように明るいものではない。

「うん……。声はかけているけど、部屋から一歩も出てこないんだ」

シリウスの口調も暗く重いものに変わる。その顔には先ほど稽古で見せていた笑顔はない。

自分の記憶を取り戻したエヴァは、部屋に引きこもってしまった。食事も取ることもせず、ただ泣いている。

「私は、人を殺してしまった。許されないことをしてしまった。私に生きる資格などありません」

閉じられたドアの向こうで、エヴァは何度もそう言っていた。その言葉を思い出すたびにシリウスの胸は痛くなる。そして、悲しみを覚えた。

舞台の空気が全体的に重くなる。シリウスが周りを見れば、かぐやたちもどこか暗い顔をしていた。

「エヴァがいないと寂しいね」

ケイリーの呟きにバージルが頷く。エヴァがいることはもうシリウスたちにとって当たり前になっていた。