幸せの花束をもらった日に、あなたに愛してるを〜箱庭の少女と舞台俳優〜
「あとでお金をお返しします」

「いや、全然いいよ!」

エヴァの目は本気だった。シリウスは慌てて「払わなくていいよ」と言うが、エヴァは一歩も引かない。少し考えた後、シリウスはエヴァに言った。

「なら、辛い時は無理して笑わないで。きちんと「辛い」って言ってほしいな。……今も無理してるんでしょう?」

「……はい」

返事をしたエヴァの顔から微笑みが消える。今にも泣き出しそうなその表情に、シリウスは胸が締め付けられた。ただまっすぐにエヴァを見つめる。

「私は……カレンを探しています」

「うん」

「カレンは私にとって、この名前を与えてくれた大切な人です」

「うん」

「エヴァという名前を与えられた時、私は道具ではなく人になれた気がしたのです。カレンと出会って私は、感情というものを知りました」

「うん」

「ですが……」

エヴァの瞳から涙がこぼれる。エヴァの涙が誰にも見えないように、シリウスはエヴァを抱き寄せた。エヴァの涙がシリウスの服を濡らす。
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