幸せの花束をもらった日に、あなたに愛してるを〜箱庭の少女と舞台俳優〜
「エヴァは……エヴァは無事なんですか?」

シリウスの言葉は震えていた。しかし、二人は質問に答えることなく背を向ける。ドアを閉める直前、メイソンが言い放った。

「お前はただの人質だ。知る必要などない」

ドアに鍵がかけられる。白い牢の中、シリウスの嘆く声が響いた。



エヴァは、両手を後ろ手にされて手錠をかけられていた。足には重い鎖が巻きつけられ、体は背もたれに縛り付けられている。さらに殺傷能力の高い銃を持ったユダとイザベルが見張りについている。

厳重に拘束されているが、エヴァがもしも一人で捕らえられたのなら死に物狂いで逃げ出そうとしていた。しかし、今は大人しく捕らえられている。

「シリウスさん……」

エヴァの頭の中に、意識を失って捕らえられたシリウスが浮かぶ。このエデンの地下のどこかにシリウスは捕らえられているのだ。もしも逃げ出そうとすれば、シリウスが殺されてしまう。そう思うとエヴァの体は動かなかった。
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