幸せの花束をもらった日に、あなたに愛してるを〜箱庭の少女と舞台俳優〜

「じゃあ、お話を説明するね。今度公演する劇は童話をモチーフにしているんだ。呪いをかけられた王子様をお姫様が助けるお話だよ」

シリウスから台本を受け取り、エヴァはページをめくる。そしてお姫様の台詞を記憶していった。

「これは……」

あるページを見た時、エヴァの胸が高鳴る。それは呪いを解くためにお姫様が王子様にキスをするというものだ。

キスというものがどんなものか、エヴァは知っている。ケイリーとアイヴィーがしているのを見たことがあるからだ。しかし、シリウスとは抱きしめ合ったりはするものの、キスをまだしたことがない。

「エヴァがしたくなったら言って？それまでしないから」

シリウスはエヴァの気持ちを考えて強引なことはしない。しかし、「キスをしてほしい」など恥ずかしくて言えないのだ。

「エヴァ、練習を始めてもいい？」

シリウスが訊ね、エヴァは「はい」と頷く。エヴァは覚悟を決めた。