幸せの花束をもらった日に、あなたに愛してるを〜箱庭の少女と舞台俳優〜

エヴァは、何かを教えると完璧に暗記する。一度言ったことは必ず覚え、かぐやよりも素早くこなしてしまうのだ。

「エヴァ、すごいね。どうしてそんなに記憶力がいいの？」

「本当。驚かされてばかりだわ」

シリウスとかぐやが言うと、いつもエヴァはキョトンと首を傾げて「これが普通だと思いますが……」と言うのだ。

「エヴァ、そろそろおやつを作りましょう」

刺繍を終えたかぐやが声をかけると、「わかりました」とエヴァは立ち上がる。そして二人はキッチンに向かった。

「今日は何を作ってくれるの？」

シリウスが訊ねると、頰を赤くしながらかぐやが「カップケーキを作ろうと思います」と微笑む。エヴァは「おいしく作れるよう、努めます」とドレスの上にエプロンをつけた。

エヴァは、屋敷での生活に慣れてきたようだ。しかし、まだエヴァの笑顔をシリウスは見たことがない。笑ったらもっと素敵なんだろうなとシリウスはバターを混ぜるエヴァを見つめながら思った。