幸せの花束をもらった日に、あなたに愛してるを〜箱庭の少女と舞台俳優〜
「エヴァ、どうだった?」

シリウスが声をかけると、エヴァは「お疲れ様です」と頭を下げる。そして、唇を開いた。

「まるで、自分が体験しているかのような不思議な気持ちになりました。とても素晴らしかったです。ただ……」

エヴァはシリウスから目を逸らし、自分の足元を見つめる。その目は、劇場に来る時に一瞬だけ見せた寂しげなものだった。

「……シリウスさんは、「愛している」と言いました。アイヴィーさんとケイリーさんも愛し合っていました。でも、私にはそれがわかりません。「愛」とは何かわからないのです」

「エヴァ……」

シリウスがエヴァに触れようとすると、「愛を知らないなんて、あなたは一体どんな人生を歩んできたの?」といつの間にいたのかかぐやが声をかける。エヴァは首を横に振った。その顔は、どこか苦しそうだ。

「エヴァ、気にしなくていいよ。愛っていうのはね、とても特別なものなんだ。君もいつかわかる時が来るよ。それは、とても素晴らしいものなんだ」

シリウスはエヴァの頭にそっと触れる。紫の花の髪飾りのついたエヴァの髪は、シリウスが想像した以上に心地よかった。このままずっと触れていたいと思うほどにーーー。
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