幸せの花束をもらった日に、あなたに愛してるを〜箱庭の少女と舞台俳優〜
「おい、シリウス」

シリウスがエヴァの髪に触れていると、バージルに声をかけられた。その声はいつもより低い。

「バージル、どうしたの?」

「バージルさん、どうかされましたか?」

シリウスとかぐやが同時に訊ねる。バージルは「剣を貸せ」と言った。

「お前、戦うシーンの後半で剣の扱いがめちゃくちゃだったぞ。もう一度教える」

「えっ!?本当!?」

バージルの言葉に、シリウスはエヴァの髪から手を離す。大切な舞台に関わることだ。しっかり練習しなければならない。剣を抜こうとするシリウスだったが、不意にその手が誰かに掴まれた。

「バージルさん、戦うシーンのお手本を私にさせていただけませんか?」

シリウスの手に触れたのは、エヴァだった。エヴァは真剣な目でバージルを見つめる。かぐやがエヴァに声をかけた。

「エヴァ、これは遊びじゃないのよ。きちんとした戦いのシーンが必要なの」

「わかっています。だからこそ、私がしたいのです」
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