幸せの花束をもらった日に、あなたに愛してるを〜箱庭の少女と舞台俳優〜
エヴァがそんなことを言ったことに、シリウスは驚いていた。どう見てもエヴァは剣とは無縁の女性に見える。華奢な腕では剣を振るうことなどできないだろう。

「……わかった。では舞台に上がってくれ」

バージルがそう言いエヴァは「ありがとうございます」と言う。そしてシリウスの剣を手に、舞台に上がった。

劇の出演者たちは、シリウスが連れて来た少女が剣を手にしていることに舞台から目を離せなくなっている。両者は互いに見つめ合い、まるで本物の戦いのような空気が流れていた。

エヴァとバージルが同時に動き出した時、シリウスはこの空気は演技で作られたものではないことを知る。演技ではないとシリウス以外も気付いたようだ。

「エヴァ、走り出したけど、バージルに勝てるわけないわ。だって彼は元軍人だもの」

「怪我をするだけよ!バージルさんはとてもお強いのに……」

アイヴィーとかぐやが言う。他の出演者たちもエヴァのことを心配する声を上げた。シリウスは何も言わずに舞台を見つめる。何も言えないのだ。
< 33 / 190 >

この作品をシェア

pagetop