幸せの花束をもらった日に、あなたに愛してるを〜箱庭の少女と舞台俳優〜
「甘いもの……ですか?」

アイヴィーはエヴァにメニューを見せる。パンナコッタやジェラートなどスイーツの名前が書かれているが、エヴァはよくわからないらしい。

「私のおすすめはティラミスかな。とってもおいしいのよ」

「では、それにします」

私もティラミスにしようかな、とアイヴィーが考えていた時、不意に声をかけられた。

「もしかして、アイヴィー・ロー?」

その声は、女優のアイヴィーに会った喜びに満ちた声ではない。悪意やからかいを込めた声だった。振り向いて声の主を見たアイヴィーに、絶望感が押し寄せる。それは会いたくない人たちだった。

「こんなところで何してんの?」

「えっ?やっぱ、こいつあのアイヴィーだったんだ」

「あの豚がこんな美人になるなんてね〜」

派手なスーツやドレスを着た男女数人が口々に話しかける。アイヴィーの体が小刻みに震えた。思い出したくない過去が蘇ってくる。

「アイヴィーさんの知り合いの方でしょうか?」
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