幸せの花束をもらった日に、あなたに愛してるを〜箱庭の少女と舞台俳優〜
後片付けをケイリーが手伝っていると、「ケイリーさん」とエヴァが話しかけてきた。

「パーティーでの歌、とても素晴らしかったです。今度歌を教えてくれませんか?」

綺麗な微笑みを見せられ、ケイリーは「う、うん……」と答える。エヴァのこの表情を見て断れない人はいないだろう。

「歌を練習して、シリウスさんやかぐやさんを楽しませたいのです」

エヴァのその言葉に、ケイリーの頭の中にある言葉が思い出される。それは、ほろ苦い思い出の一部だった。

『俺、もっとギターを練習して世界中の人を感動させられるギタリストになりたいんだ!』

「エイダン……」

ポツリと呟いたその言葉に、エヴァが首を傾げる。

「ケイリーさん?」

困ったような声にケイリーはハッとし、エヴァを見つめた。そして疲れたように笑う。

「ごめんね」

「お疲れでしたら、お話は今日ではなくても構いませんが……」

「ううん。今日がいいんだ」
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