幸せの花束をもらった日に、あなたに愛してるを〜箱庭の少女と舞台俳優〜
シリウスがエヴァの荷物を手にし、隣に立つ。エヴァは「申し訳ありません」とまた言っていた。

「一体、なぜ倒れたんだ?」

バージルが訊ねると、エヴァは困ったような表情を見せる。そして、「昔のことを少し思い出しました」と小さく呟いた。

バージルの目が見開かれ、シリウスたちは「どんなことを思い出したの?」と興味津々と言った顔をする。エヴァは言うべきか迷っているようだったが、口を開いた。

「……私も、あんな服を着ていました。そして人をナイフや銃でーーー」

エヴァは口を閉ざす。シリウスたちはエヴァの記憶の一部に驚く。しかし、バージルは納得していた。武術に優れるためには実戦を積まなければならない。

「もしかしたら、お前は軍人だったのかもな」

バージルがそう言うと、シリウスは「ならバージルと一緒だね」と安心したような顔をする。軍人なら戦場で人を傷つけてしまう。仕方がないとシリウスたちはホッとした顔をしていた。
< 76 / 190 >

この作品をシェア

pagetop