幸せの花束をもらった日に、あなたに愛してるを〜箱庭の少女と舞台俳優〜
シリウスがドアに近づいていくと、話し声がボソボソと聞こえてくる。それは、両親とエヴァの声だった。シリウスの胸がドキッと緊張する。そして、何の話をしているのか耳を澄ました。

「エヴァさんは記憶がないの?」

「はい。最近は少しずつ思い出が浮かぶ時はあるのですが、私にはわからない感情が多いのです」

「例えば、それはどんなものだい?」

両親にエヴァは感情の話をしている。シリウスは気配を殺し、エヴァの言葉を待った。

「私は、劇団の人と関わることで微笑むことができるようになりました。しかし、怒りや悲しみなど劇で多く登場する当たり前の感情がわからないのです」

「そうか……」

エヴァがどのようなの顔をして話しているのか、シリウスには予想ができた。無表情で感情がないとエヴァは言っているが、そんなことはないとシリウスは知っている。時折りエヴァは、寂しげな顔を見せるからだ。

「私は、今一番知りたい感情があります。それはーーー愛というものです。愛とは、一体何なのでしょうか。お二人ならわかると思ったのです。私に、愛が何か教えてください」
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