幸せの花束をもらった日に、あなたに愛してるを〜箱庭の少女と舞台俳優〜
「エヴァさん……」

両親の声が響く。しばらく沈黙が続いた後、母が言った。

「愛とは、自分より大切な人に対する感情なの。胸がとても温かくなって、どんな宝物よりも美しい。そして愛は人を成長させて、幸せにしてくれる」

「人を幸せに……」

シリウスは少しだけドアを開けた。エヴァはうつむいていて、その様子を両親は優しい目で見つめている。

「私は、記憶を失くした直後から覚えている人がいます。その人の名前はわかりません。でも、私にこの名前を与えてくれた人なのです。そして、その人のことを想うと胸が温かくなるのです。これは愛なのでしょうか?」

エヴァは名前をつけてくれた人のことを「両親」とは言わなかった。つまり、エヴァという名前をつけたのは他の誰かだ。そのことにシリウスはますますエヴァを知りたくなる。そして、エヴァが両親に話していることを自分に話してくれなかったことに、少し寂しさを感じた。

「それはきっと愛だよ。人はね、知らないうちに愛を学んでいくんだ」
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