18歳で父になった。
「ありがとう!図書室で読んだんだけど、自分用も欲しいと思ってたの」
「面白かったよ」
"でしょ?"と嬉しそうに頷く恋雪に暖かい気持ちになる。
いつもは大人しいのに、自分の好きなことに対するものは饒舌になるのも好きだったなぁ。
「紫苑くん…」
「ん?」
放課後の少し静かになってきた教室で
恋雪と真正面から目が合って
とても何か言いたげなことに気がついた。
「えっと…もし、よかったら…」
躊躇うように、一つ一つ紡がれる恋雪の優しい声に耳を傾けて居ると
そんな声を遮るようにガラッと教室のドアが開いた。
「紫苑くん!
今日部活ないって光司くんから聞いたんだ
一緒に帰ろう?」
そう笑顔で入ってきたのは柚子。
柚子が入ってきたことで、口を閉ざしてしまった恋雪に目をやると小さく首を振った。
「なんでもないよ、じゃあ帰るねバイバイ」
小さく早い口調でそう、俺に言って
直ぐにカバンを持ってドアから出ていってしまった恋雪。
なにを言おうとしたのか。
大事な事なような気がしたんだがなぁ…。
なんて申し訳なくなりながら、柚子に目をやると
柚子は少し頬をふくらませていた。
「今の元カノでしょ?」
ああ、知ってたのか。
まぁ、高1の途中まで付き合ってたし、知っててもおかしくないか。
なんて考えて、俺もカバンに荷物を詰めて柚子の元に行くとまだ膨れた様子の柚子。
「元カノと仲いいの?」
「まぁ、普通に友達だよ」
「ふぅん…やっぱかっこいいね紫苑くん」
"そうか?"なんて笑うと、柚子もいつもの笑顔に戻った。