18歳で父になった。
足音とともに、そう言って現れたのは若い男。
襟足の長い金髪で、ピアスは目に見えるだけで8個。
耳に6個、目の下に2個。
つり目でハスキーボイス。
正直、この男は誰だ?でしかない。
「龍ちゃん!まだなの!だから一緒に説得してくれない?」
「おー、わかった」
龍ちゃんと呼ばれた男は、呆然と立ち尽くす俺の前に来ると、そっと肩を掴んできた。
その威圧感は中々のものだ。
「俺の就職が決まるまで柚子と結婚しててくれよ〜。じゃないと俺じゃ柚子をまだ養えないんだよ」
「は?」
肩を掴まれて言われたことは訳が分からないこと。
何を言ってるんだ??
全く話が見えず、何から質問するか考えていると、椅子に座って笑う柚子が足を組んで俺に向かって言葉を投げた。
「だーかーら、お腹の子は龍ちゃんのなの。
でも、龍ちゃん今年高校卒業で就職するから、お金ないじゃん?
んで、とりあえず紫苑くんと結婚してて、養って貰うって思いついたのー!」
「え、マジで何言ってんの?」
「つまり、強姦ってのは嘘。
龍ちゃんとヤッて、出来たからあんたを利用したってわけ!
お人好しで助かったわ〜」
あはは!と高い声で笑う柚子が悪魔にしか見えない。
言われたことを理解するには少しの時間がかかった。
じゃああのリスカも、演技だったってこと?
そんな理解し難い現実に頭が痛くなる。