18歳で父になった。
「紫苑くんはずっとあんたのことが好きなの!私と付き合う前も付き合ってからも!ずっと引きずってるの!」
「そ、そんなこと」
「そうなの!!あんただけはずっとずっと特別なのよ!」
柚子ちゃんはそう言って私を睨みつけてくるが、そんなはずは無い。
だって私はようやく付き合えたのに…。
何も言えずにいると、柚子ちゃんはふんっと鼻を鳴らしてそっぽを向いてしまった。
「私のことを1番に思ってくれる人じゃないと好きじゃないもん」
そっぽを向いた柚子ちゃんのそんな少し悲しげな声に胸が痛む。
きっと柚子ちゃんは本当はちゃんと紫苑くんのこと好きだったんだと思う。
でも、もっと1番になりたくて好きじゃないなんて嘘をついたのかもしれない。
いずれにしても紫苑くんを深く傷つけたのは事実だけど、やり方が違うだけで私達は同じものを感じていたのかもしれないな…。
「わかる、かもしれない。
私も紫苑くんと初めて付き合ってた時は、紫苑くんの優しさと愛情の区別がわからなくなって辛くて振ったの…。」
「……。」
「でも別れてからすぐに気づいた。
誰にだって優しいけど、彼女であった私には細かいところとか、些細な変化に気づいてくれてたって」
きっとそれが紫苑くんの愛情なんだって。
いつも優しすぎるから気づきにくいけど
みんなに対する優しさと、私への優しさは確実に愛情が籠ってたってわかったの。
「なんて、別れてから気づいても遅かったんだけどね」
そんな、私の言葉に柚子ちゃんは俯いて顔がよく見えない。