18歳で父になった。
「部活や勉強で忙しくても必ず一緒に帰ってくれたり、遊べはしなくても帰りにどこかに寄ってくれたり。
思い返せば私は沢山紫苑くんから愛情を貰ってたのに、自分はなんて自分のことしか見えてなかったんだろうって思ったんだ。」
だから今回は絶対に大切にしたい。
もう二度と紫苑くんを悲しませたくない。
そう思っている。
と、伝えると少しだけ肩を震わせる柚子ちゃん。
「そんなの今更知ったって遅いじゃん」
「うん」
「あの頃も紫苑くんはあんたのこと大事にしてたもん。」
俯く柚子ちゃんの目からはポロポロと涙が零れるのが見てわかるが触れないでおいたがいいのかな。
確かに、別れたあとも紫苑くんは私に優しかった。でも…。
「あの頃の私への優しさは友情以外の何でもなかったよ。
自分や私達の都合より柚子ちゃん。
自分がきつくてもなんでも柚子ちゃん。
妊娠が学年中にバレて、紫苑くんのこと好きだった女の子たちが敵に回った時も、柚子ちゃんのことだけ守ってたの。」
柚子ちゃんは知らなかったかもしれないけど。
紫苑くんの敵になったり
柚子ちゃんを悪くいう子がいたけど。
紫苑くんの敵は何も言い返さなかったのに
柚子ちゃんの悪口だけは毎回訂正してたんだよ。
それだけ凄く愛されてたよ。
羨ましいくらい。
そう、伝えるともっとポロポロと涙を零して鼻水を啜る柚子ちゃん。
「柚子ちゃんと別れたあと、滅多に泣かない紫苑くんが号泣して、弱音を吐いてたんだよ。
好きだったって本当にちゃんと好きだったんだよ」
少し意地悪なのかもしれない。こんな事言うの。
でも、紫苑くんの気持ちを知って欲しくて
泣いている人に追い打ちをかけるみたいだけど、紫苑くんの愛情は確実にあったと知って欲しいの。