18歳で父になった。




俺の問いかけに、柚子は一瞬の迷いもなく首を縦に振った。






「全然1度も好きだなんて思ったことない。
むしろ優しすぎてうざい」







そんな柚子の言葉が胸の奥深くに刺さる。


悲しい。悔しい。
その感情と同時に申し訳ない気持ちになった。






「好きでもないのに、俺との子供産んでくれてありがとう。一緒に暮らさせてごめんね」






ずっと無理をさせていた。

そう考えると、最近の冷たい態度も俺といたいわけじゃなかったなら納得だ。




俺が謝ると、柚子は机をバンと叩いて笑った。






「本当にお人好し!
言っておくけど、香菜も私とグルだから!
襲われそうになったのも演技!あんたが浮気したら慰謝料でも取ってやろうと思って!」



「え…?」



「香菜もあんたのこと好きじゃないから!
それなのにめでたいよねほんと!」






柚子の言葉に声が出ない。

じゃあ結婚記念日の騒動は全部柚子が香菜と仕組んだってこと?



それを聞いた瞬間に、俺の中で全てが崩れていく音がした。






「自分の子かもわからないガキ育てたいなら育てれば?せいぜい頑張ってくださーい」






そう言ってケラケラ笑う目の前の悪魔の気持ちが全くわからない。



俺はなんでこの人にこんなことを言われているんだろう?



妊娠させたのは悪かったと思う。
でも本当は俺の子じゃないかもしれないと。
しかも好きじゃないけど金と将来で結婚したと。



それからも散々ボロカス言われて、バイトも大学も育児も家事もやってた。



それなのにこんなことを言われるの?




そんな理不尽で、理解し難いこの状況に
何故か涙が出てきてしまった。






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