18歳で父になった。




太一くんが部屋に行ってしまってしばらく考え込んだ。



小学校の時勝手に一目惚れして
中学でやっと仲良くなって付き合った。


私の勝手な都合で高校になって別れて。


それでもずっと馬鹿みたいに一途に好きで…。




そんなことを思い返すと、どうしていいかなんて悩んでたって仕方ない。


紫苑くんが恋愛したくないのも
柚子ちゃんを引きづってるのも
私のことを好きじゃないから。


特別でも好きじゃない。


それだったら意味が無いもの。





今更、紫苑くんへの恋の仕方に漬け込むとか漬け込まないとか考える余裕が私には無いはずだ。




自分がのろまで、改めて告白できなかったから柚子ちゃんの恋人になって
柚子ちゃんに騙されて傷ついてる。




だったら失うもののない私は無敵なんじゃないだろうか?




上手くいったら万々歳。
いかなくても今と変わらない。




だったら捨て身でも、紫苑くんと向き合ってみてもいいんじゃないかな?




そんな勇気が湧いてきた私は、蹲る紫苑くんをそっと抱きしめた。






「紫苑くん、お願いだからそれ以上自分を責めないで」






突然抱きしめられた紫苑くんは驚いたように一瞬息を飲んだのがわかった。


それから、直ぐに私から離れようと力を入れたが、私も負けじと強く抱きしめる。






「大丈夫だから!今だけだから!
明日からはしっかりする!だから!」






紫苑くんはいつもは表さないような、焦りと少しの怒り、それから悲しみの混ざった声でそう私に言ってきた。


こんな姿は初めてで
私の目からも涙がでてくる。






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