18歳で父になった。
「紫苑くんに酷いこと言わないで」
柚子の手を叩いた恋雪は、いつもの優しいふんわり癒し系とは思えないほど、怒りの感情が露わの顔をしていた。
恋雪に思わぬ不意打ちをくらった柚子は
さっきよりもさらにキュッと眉を上げて恋雪の肩を叩き返す。
「なにあんた?ただの柚子葉の面倒見てくれる便利な友人なくせに生意気なんですけど」
「そんな嫌なことでしか紫苑くんを繋ぎ止められないからって言わないで」
「こんな男いらないし!こんなクズ人間」
「じゃあもう関わらないでよ!」
2人の言い合いがヒートアップしそうになったところで、俺は間に割って入る。
恋雪のこんなに怒った姿には驚いたが、それだけ俺の事を思ってくれているのだろう。
恋雪は本当に心から優しい子だ。
「俺は何を言われてもいいから。
早く柚子葉のケーキ買いに行くぞ」
「で、でも…」
「恋雪は気にしないでいい。
柚子、不満があるなら今度聞くから」
今日は急いでるんだ。と、言うと柚子はふんっとそっぽを向いてそそくさと歩いて行ってしまった。
そんな後ろ姿を複雑そうな表情で見る恋雪の頭をポンポンと優しく叩くと
ハッとして俺をみて、いつものように優しく微笑んだ恋雪。
「恋雪はそっちの方がいいよ」
「え?」
「俺なんかのためにあんな顔しないでいい」
恋雪の笑顔は見ているだけで救われるから。
昔から癒されるから。
そんな思いで、その言葉を告げると恋雪は1度俯いて
そのあと俺の顔をしっかり見つめてきた。