歌い手、なりませんか?
奏葉はそう言い、リアムを見つめる。心配げな目で見つめられ、奏葉は話すことを決めた。

「私ね、本当は歌うことが大好きで小さい頃は歌手になるのが夢だった。でも小学生の頃、音楽の授業で自分の好きな歌を歌うっていうのがあって、私はボカロを歌ったんだ。その後にクラスの人から馬鹿にされて、その日からいじめられて……」

また奏葉は泣き始める。そして、心の奥底に隠した思いを伝えた。

「……本当はね、リアムたちが声をかけてくれて嬉しかったの。私、もう過去に囚われたくない!私、変わりたい!」

「……わかった!俺が、俺たちが協力する!奏葉が生まれ変わるように」

奏葉の涙が優しく拭われる。リアムが微笑んでくれていた。

「もうすぐ学園祭だろ?その時にみんなでミニライブをやろう!そこで思い切り歌うんだ!」

「うん!」

リアムの笑顔やみんなの存在があれば、恐れることはない。そう奏葉は思った。初めて、前を向いて歩こうと思った瞬間だ。
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