歌い手、なりませんか?
クララに目を輝かせながら言われ、奏葉は「ううん。私なんて全然上手じゃないよ」と苦笑した。

クララはこっそり歌い手をしている。歌い手という存在はクララから聞いて初めて奏葉は知った。今までは原曲しか聴いたことがなかったのだ。

「クララは次はどんな曲を歌うの?」

「前に投稿したのがサンドリヨンでしたから、次はメルトにする予定です」

「私もその歌好き!」

「では、一緒に歌いましょう」

奏葉とクララは二人でメルトを歌う。夕暮れの中、二人の歌声が空に響いた。



それから数日後、奏葉は変わらない平和な日々を送っている。ボカロ曲を聴いて、クララの前だけで歌う。そんな日々が続くことが当たり前だと思っていた。

クララが先生に呼び出されたため、奏葉は教室でクララを待っていた。スマホでYouTubeを開き、大好きなボカロ曲を聴き続ける。


もっと縋ってよ 知ってしまうから
僕の歌を笑わないで
海中列車に遠のいた 涙なんて なんて

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