歌い手、なりませんか?
「でも、リアムが連れて来たということは才能があるってことだと思うんだけど」

ダグラスが言い、エリエスも「そうね。何か歌ってみて」と奏葉に言う。その言葉に奏葉は体を強張らせた。

頭に再生されるのは、大好きな音楽ではない。歌い終わり、拍手をもらったあの瞬間だった。あの幸せな拍手の後、自分の身に起こった出来事を忘れたことは一度もない。

「えっと……私……」

奏葉は何を歌えばいいか、わからなくなっていた。歌詞が浮かんでこない。その様子を見ていたリアムが「よし!」とスマホを取り出す。

「なら、お手本で俺らが先に歌おうぜ!」

「いいね!よし、歌おう!」

フェンジュンが張り切り、エリエスとダグラスは何を歌おうか考え始める。奏葉はもう引き返せないのだと悟った。

「よし!トップバッターは俺!」

リアムが立ち上がり、音楽をかける。流れ出したのは、太陽系デスコだった。サビの部分では、ダグラスたちも盛り上げる。
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