歌い手、なりませんか?
奏葉は、リアムの歌唱力に心を掴まれた。爽やかで明るい声が音楽室に響く。歌が終わった後、奏葉は自然と拍手をしていた。

「サンキュー!次は誰が歌う?」

「私が行くわ」

エリエスが手を挙げ、「頑張れ!」とフェンジュンが言う。エリエスが歌ったのは砂の惑星だった。エリエスの力強く響く低音に、奏葉はそっと胸元を掴む。

クララはワンダーラストを、ダグラスはいつか、シンデレラがを、フェンジュンはハッピーシンセサイザを歌った。

「みんな、すごく上手……」

かっこいい声、可愛い声、綺麗な声が奏葉の耳から離れない。胸は高鳴って止まなかった。

「さあ、次は君の番だよ」

ダグラスが言い、リアムたちが期待した目で奏葉を見つめる。心配そうな顔をするクララを見て、奏葉は仕方ないと覚悟を決める。そして、口を開いた。


期待通りの、
理想通りの僕に
なれなくてごめんね


奏葉の歌を、リアムたちは真剣に聴いている。そして、奏葉が劣等生シンドロームを歌い終わると、拍手をしてくれた。
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