歌い手、なりませんか?
「ごめん。私には無理だよ」

奏葉はそう言い、リアムの前から立ち去ろうとする。しかし、その日はリアムに手を掴まれてしまった。

「歌いたくない理由って、本当にそれだけ?絶対違うよね?」

リアムに言われ、奏葉の胸がドクンと音を立てる。青いリアムの瞳の中には、目を泳がせる自分がいた。


アナタといられるそれだけで
電子のココロ、震えるの


あの時の出来事が奏葉の頭に再生される。気が付けば、奏葉は涙をこぼしていた。

「えっ?奏葉?」

戸惑うリアムに申し訳ないと奏葉は思いながらも、涙を止めることができない。奏葉は肩を震わせ、リアムは恐る恐る奏葉の頭を撫でてくれた。


人を撃つのはこれが初めてではないけれども
泣きながら撃つのは初めてかな


奏葉が泣きながら歌い始めたことに、リアムは驚いていた。しかし、これが奏葉が泣き止むための唯一の方法なのだ。少しずつ心が落ち着いてくる。

「ごめんね、急に……」
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