My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5

「明日、町の中を調べてみよう」
「そうだね」

 こう暗くては何もわからない。
 セリーンは持っていた灯りを窓際の人形の隣に置き、ベッドの方に視線をやって小さく舌打ちをした。
 見れば案の定ラグが元の姿に戻っていて。

「この町にいる間はその姿を見せるな」
「ふざけんな。それより」

 その鋭い視線がこちらを向いてギクリとする。

「お前はもうちょっと男らしく出来ねぇのかよ」
「うっ」

 痛いところを突かれて一瞬言葉に詰まる。

「で、でもリディアンちゃんは男だって思ってくれたみたいだし」
「いや、私は自然で良かったと思うが。それよりも、私はもう一度あの子の“お兄ちゃん”が聞きたい」

 うっとりとした表情で言われてラグの顔にさっと赤みが差した。
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