My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
「あれは、あまりにこいつが男に見えねぇから」
「誰も貴様には言っていない」
冷たく一蹴され、わなわなと身体を震わせるラグを見て私は慌てる。
「あ、明日はもう少し男に見えるように頑張るね!」
するとラグは大きな溜息を吐いてから私の方を見上げた。
「本出せ」
「え?」
「あの海賊の本だ」
「あぁ!」
私はセリーンが持ってくれていた荷物からグリスノートから借りた本を取り出しラグに手渡した。
ラグは今までずっと下ろしていた長い髪を紐で纏めてからその本を膝の上でめくり始めた。
覗き込もうとして、私が前に立つと蝋燭の灯りを遮ってしまうことに気付く。
「隣座っていい?」
一応訊くとラグはちょっと驚いたような顔で私を見上げてから「あぁ」と答えまた視線を落とした。
彼の隣に腰かけ見ると丁度楽譜のページが開かれていた。そして先ほど目に焼き付けた“エルネスト”と書かれているらしい文字を見つけた。