My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
「この本の楽譜には全て、あの野郎の名が書かれてるみてぇだな」
それからラグは気付いたように一度その本を閉じ、表紙のタイトルらしき綴りを見て眉を寄せた。
「なんて書いてあるの?」
ラグはその大分掠れてしまっている文字をゆっくりと指でなぞりながら答えてくれた。
「“セイレーンの歌”」
「!?」
私は目を見開く。
「じゃあ、この本に載っている楽譜は全部セイレーンのための歌ってこと?」
思わずそう訊いてしまったが、ラグにもわかるはずがない。案の定、彼は黙ってその眉間の皺を更に深めた。
(エルネストさんとセイレーン……。一体どんな関係があるんだろう)