My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
――僕はずっと銀のセイレーンを呼んでいた。そう、彼は言っていた。
と、ラグが再び楽譜のページを開いた。
「あの野郎が本当にこの歌を作ったんだとしてだ。あいつがもう生きていない可能性が高くなったわけだ」
その言葉にどきりとする。
「なんで……」
「20年やそこらでここまで古くなるかよ」
そう言ってラグは本の最後のページを開いて見せた。
「そら見ろ、この日付。200年以上前のもんだ」
指差された文字は勿論読めなかったけれど、言葉が出なかった。
(200年以上前……)
「私の見た絵のこともあるしな」
セリーンも神妙な顔で私の前に立ち、楽譜を見下ろした。
「まぁ、その方があの姿も理解出来る」
いつもの、あの幽霊のような姿。
やっぱりエルネストさんは、もう……。
知らず膝の上で強く両手を握りしめていた。