My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5

 ――僕はずっと銀のセイレーンを呼んでいた。そう、彼は言っていた。

 と、ラグが再び楽譜のページを開いた。

「あの野郎が本当にこの歌を作ったんだとしてだ。あいつがもう生きていない可能性が高くなったわけだ」

 その言葉にどきりとする。

「なんで……」
「20年やそこらでここまで古くなるかよ」

 そう言ってラグは本の最後のページを開いて見せた。

「そら見ろ、この日付。200年以上前のもんだ」

 指差された文字は勿論読めなかったけれど、言葉が出なかった。

(200年以上前……)

「私の見た絵のこともあるしな」

 セリーンも神妙な顔で私の前に立ち、楽譜を見下ろした。

「まぁ、その方があの姿も理解出来る」

 いつもの、あの幽霊のような姿。
 やっぱりエルネストさんは、もう……。

 知らず膝の上で強く両手を握りしめていた。
< 105 / 280 >

この作品をシェア

pagetop