My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
「あいつが笑ってる気がしてムカついてきた」
ブゥがその頭からふわりと飛び立って今度は私の帽子の上に乗ったのがわかった。それに少し癒されて。
(確かに、エルネストさんが今の私たちを見ていたらきっとくすくす笑っていそう)
彼が本当に幽霊だとしても、あの優しい笑顔を怖いとは思わない。最初からそうだった。――ただ少し、寂しく思った。
ラグは本を手にしたまま窓際に移動し、灯りの下にどっかり腰を下ろしてまた本を捲り始めた。
「まだ読むの?」
訊くとラグは視線を落としたまま答えた。
「あぁ。お前はもう寝ろ」
(あ……)
ベッドを譲ってくれたのだと気付いて、私はつい先ほど自分が考えたことを恥じた。
「ありがとう、ベッド」
「……」
案の定返事はなかったけれど私は小さく微笑んでセリーンを見上げた。
「セリーン、一緒に寝よう?」
「リディアンが見たら驚くだろうな」
そう悪戯っぽく笑ったセリーンに私は「確かに」 と言って笑った。