My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
「そうだったんだ」
私は満足だった。今は、ここまで教えてくれたことがとても嬉しかった。
「ありがとう」
「は?」
思わずお礼の言葉を口にするとラグは怪訝そうな目でこちらを見た。
「思い出したくないこと、話してくれて」
「い、いや」
彼は一瞬その瞳を大きくして、またすぐに本に戻ってしまった。
彼が頭を動かす度にその上に乗っているブゥが落ちないようにうまくバランスをとっているのを見て小さく笑ってしまう。
「それがきっかけであの子が誕生したわけか」
背後でセリーンが感慨深そうに言うのを聞いて、ラグがまたこちらを向いた。今度ははっきりと怒りに顔を引きつらせて。
「さっさと寝ろ!」
「言われなくとも」
そしてセリーンは再び横になり、私は苦笑しながらふたりにおやすみを言って目を閉じた。
――その後、私はすぐに深い眠りに落ちたけれど、そう長くは休んでいられなかった。
私を夢の中から引き摺り出したのは、リディアンちゃんの甲高い叫び声だった。