My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 5
「いいでしょ、別に! 私だってグレイスが心配なのよ!」
するとグリスノートはこちらに聞こえるような舌打ちをひとつして前に向き直りまた進みはじめた。
その後で、リディアンちゃんが小さく呟くのを私は聞き逃さなかった。
「オルタードのことも気になるし」
「リディアンちゃん。その、オルタードって人のことなんだけど」
私が声を掛けるとリディアンちゃんは再びこちらを振り向いた。
「リディでいいわよ」
「え? じゃあ、リディ」
私が少し照れつつそう呼ぶとリディは満足げに頷いた。
「オルタードのこと?」
「そう。どんな人なのかなって」
少し前を行くセリーンにも聞こえるように少し大きな声で訊く。
するとリディはすぐに答えてくれた。
「オルタードは海賊団ブルーを作った人よ。兄貴が頭になってからはみんな長って呼んでる」
そう話すリディはなんだか誇らしげに見えた。